「その湿布、ホントに必要?」介護現場のモヤモヤと、2027年から始まる薬代の話
こんにちは、のぼるちゃんです。
今日は夜勤の前に、少し真面目な話をひとつ。
介護の仕事をしていて、ずっと心に引っかかってることがあります。それが「高齢者の薬の多さ」です。
飲み薬だけではありません。追加の、保湿剤の軟膏、痛み止めの湿布……。毎日同じところに何枚も貼っておられる現状があります。「ここも」「あそこも」って。正直、「貼らないと損」くらいの勢いで使っている方が、本当に多いです。もう薄っすら赤くかぶれて来てるからとりあえず、おやすみして明日また貼り直しましょと提案もしますが、答えは「NO」が多いです。
確かに痛いのはホントやと思います。「ちょっとでも楽になりたい。」この気持ちは十分理解できるし、間違ってないと思います。ただこれでほんとに治るなら・・・。もちろん仕事なので、貼って欲しいと言われれば、指示された通りに貼ります。けれど心の中では「これ全部税金やんな……」と、なんとも言えない気持ちになる時があります。ご本人はおそらく、そんなことは考えていない。それが悪いという話ではなくて、ただただ複雑な気持ちになる・・・そういう話です。
「こんな風に思う私は人でなしか?」正直に言うと、こういう現場を見ていると「税金の無駄遣いなんじゃないか」と思う瞬間は、結構あります。若い人が一生懸命働いて納めてくれた税金で、当たり前のように湿布をたくさん使っている方がいる。別の所では「年金が少なすぎる」という声も聞きます。現役で働く世代の毎月の負担額は増え続けており、この構図は、どこか歪んでいると、介護の仕事をしながらずっと思っています。
そして自分自身のことで言うと、こんな仕事をしているからこそ余計に、「自分は長生きしたいとは思わない」と思っています。長生きが幸せかどうかは人それぞれで、長生きされている方を否定するつもりは全くありません。ただ、自分自身のこととして考えた時に、そう思ってしまう瞬間が正直あるという事。介護を仕事としてるのにおかしい、と言われそうですが、この複雑な気持ちは、綺麗事だけでは片付けられない気がしています。
2027年3月から、薬代のルールが変わります
そんな中、最近ニュースになっているのが「OTC類似薬」の負担の話です。ネット上では「3割負担が10割負担になる」というような、かなり煽った書き方をしている記事も見かけますが、調べてみると実際は少し違う内容だったので、正確なところを整理しておきます。
OTC類似薬とは?
ドラッグストアで買える市販薬(OTC医薬品)と、成分や効き目がほぼ同じ「病院で処方されるお薬」のことです。例えば、痛み止めのロキソニン、花粉症のアレグラ、それから湿布薬なんかもここに入ります。
2027年3月から何が変わるの?
- 対象:77成分・約1,100品目
- 薬剤費のうち75%は、これまで通り保険適用(1〜3割負担)
- それに加えて、薬剤費の**25%**を「特別の料金」として、保険とは関係なく全額自己負担することになる
つまり「保険が効かなくなって全額負担(10割負担)になる」わけではなく、「薬剤費のうち4分の1の部分だけ、保険の外に出る」というのが正確なところです。
負担が増えない人もいます
- 子ども
- がん・指定難病の患者さん
- 低所得の方
- 入院中の方
- 医師が「医療用薬が必要」と判断した場合
- *(経過措置として)皮膚保湿剤を通年使うアトピーの方や、湿布薬を通年使う重症の変形性膝関節症の方など、一部の長期使用者。こういうケースでは、この特別料金は求められない見通しです。
何故こんな制度に?
国が挙げている理由は、「市販薬を自分で買って我慢している人と、病院でもらっている人との公平性を保つため」。あわせて、現役世代の保険料負担を抑えたい、という狙いもあるようです。
正直、狙いはわからなくもないです。介護の現場で毎日「あっちもこっちも湿布」という光景を見ている身としては、「自分で買える範囲のものは、みんなで少しずつ負担してもらいましょう」という発想自体は、そこまで的外れとは思いません。
ちなみにこれ、他人事のように書いてますが、ロキソニンやアレグラ、湿布薬なんて、50代の私たちも普段からお世話になっている薬です。対象の77成分に当てはまれば、年齢に関係なく誰でもこの負担増を受けることになるので、決して「高齢者だけの話」ではありません。
〈ちょっと余談〉プロペトも対象⁉️🫢
厚労省が示した77成分の一覧、ちらっと覗いてみたら、ロキソニンやアレグラ(フェキソフェナジン)はもちろん、ヒルドイドでおなじみのヘパリン類似物質や、プロペトの一般名でもある白色ワセリンまで入ってました。
ヒルドイドは、若い人への美容目的の処方が問題視されて以前から処方制限の話が出てたので想定内でしたが、プロペト(白色ワセリン)まで対象になってたのはちょっと驚き。実際、介護現場では、乾燥肌の保湿として毎日のように使う軟膏だったから。
じゃあ実際いくら払うことになるの?
ここ、ニュースだけ見ると誤解しやすいポイントなので、具体的な数字で整理します。
ポイントは、「今までの自己負担額に、そのまま25%を上乗せする」のではない、というところです。正しくは、薬剤費(10割分)を75%と25%の2つに分けて、それぞれ別の計算をします。
- 75%部分 → 今まで通りの自己負担割合(1〜3割)がかかる
- 25%部分 → 保険が効かず、まるごと自己負担(=特別料金)
具体例:1割負担で、今100円払っている場合
- 今100円払っているということは、薬剤費(10割分)は1,000円
- 保険適用部分(75%)=1,000円×0.75=750円 → これに1割負担で 75円
- 特別料金部分(25%)=1,000円×0.25=250円 → 全額自己負担で 250円
- 合計=75円+250円=325円
つまり、今まで100円だったものが、325円になる計算です。
なお、この特別料金の250円部分には消費税10%が上乗せされる可能性も指摘されています(まだ正式には決まっていません)。その場合は250円→275円になり、合計は約350円になります。
参考までに、3割負担の方の場合も計算しておくと、
- 薬剤費1,000円のうち、保険適用部分(75%)=750円 → 3割負担で225円
- 特別料金部分(25%)=250円 → 全額自己負担で250円
- 合計=225円+250円=475円(今までは300円だったもの)
*厚生労働省の資料をもとにした試算です。
その25%はどこに払うの?
ここも誤解しやすいところなので整理しておきます。
この「特別の料金」は、あくまで薬剤費そのものにかかる負担です。診察料や処方箋料とは別枠の話。
今は「病院で処方箋だけもらって、外の調剤薬局で薬を受け取る(院外処方)」というスタイルが主流で、全国平均で見ると82.2%が院外処方(2025年度・日本薬剤師会調べ)。なので多くの場合、この特別料金を実際に払うのは、病院の会計ではなく調剤薬局のレジ、ということになります。
ただ、院内処方(病院の中でそのまま薬を渡すスタイル)のところも、まだ2割弱くらい残っています。都道府県によってもかなり差があって、院外処方が9割を超える地域もあれば、6割台にとどまる地域もあります。院内処方のクリニック・病院にかかっている場合は、病院の会計窓口でこの特別料金も一緒に払うことになります。
どちらのパターンでも、病院の診察料や処方箋料そのものが値上がりする、という話は今のところ確認できません。上がるのはあくまで「薬剤費」の部分だけ、というのが正確なところです。
高額療養費制度もじわじわ上がってます
これはOTC類似薬とは別の制度ですが、あわせて知っておいた方がいい話です。
高額療養費制度(1か月の医療費が一定額を超えたら、超えた分が戻ってくる制度)の自己負担の上限額は、2026年8月からすでに段階的に引き上げが始まっていて、2027年8月にはさらに所得区分が細分化される予定になっています。上がり幅は所得区分によってバラバラですが、高所得の区分ほど上昇率が大きい設計です。長く治療が必要な人向けの「多数回該当」の仕組みは維持されるようなので、そこは一応の配慮がされている感じです。
最後に
介護の現場に立っていると、「医療費」とか「保険料」の話は、ニュースの中の出来事ではなくて、目の前の利用者さんの日常そのものなんですよね。湿布を何枚も貼る手を止めながら、「これ、誰が払ってるんやろ」とふと思う瞬間は、正直しょっちゅうあります。
だからこそ、変に煽られた情報に振り回されないように、ちゃんと「今、実際に決まっていること」を知っておきたいと思います。2027年3月からの変化は「10割負担になる恐怖の改正」ではなく、「薬剤費の4分の1だけ、保険の外に出る制度」というのが正確なところ。それでも、じわじわ負担が増えていく流れそのものは間違いなくあるので、50代の私たちにとっては、他人事ではなく「自分の生活にどう関わってくるか」という視点で見ておく必要があると感じています。
自分は長生きしたいとは思っていません。それでも少なくとも、「自分の身体とお金は、自分でちゃんと把握しておく」——これだけは、この仕事をしているからこそ余計に大事にしたいなと思う今日この頃です。
それでは、今日も夜勤、いってきます。
参考にした情報源
- 厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しの在り方について」(令和7年12月25日 第209回)
- OTC類似薬とは?保険適用除外の理由や対象一覧・追加負担の計算方法を解説|薬事日報ウェブサイト
- 【制度改正】令和8年8月から高額療養費制度が見直されます|全国健康保険協会(協会けんぽ)
